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6月に関西方面へ旅行にいったさい、大阪・淀屋橋にある適塾を訪ねました。

適塾は、幕末の蘭学者、緒方洪庵(おがた こうあん 1792-1863)が開いた蘭学塾です。門下生の多くは優秀な人が多く、1万円札の肖像でおなじみの福沢諭吉(ふくざわ ゆきち 1835-1901)も、若かりしころ、この適塾で学びました。適塾での生活ぶりや、勉学にはげむようすについては、福沢諭吉の著書『福翁自伝』に生き生きと描かれていますので、ご興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

DSCN0211.JPGさて、緒方洪庵は多くのオランダ語の本を翻訳していますが、適塾にあった展示のなかで、私がとくに印象深かったのは、緒方洪庵の翻訳に対する考えを福沢諭吉が述懐していた文章でした。簡単にまとめると、「翻訳というのは、そもそも原書を読めない人のためにするのだから、わかりやすい日本語にしなければならない、と洪庵先生はおっしゃっていた」というものです。

洪庵先生のことばに、私も翻訳家のはしくれとして、「翻訳する」ことの原点をあらためて気づかされた瞬間でした。